第17話
金ヶ崎の退き口
挟み撃ちをされて大ピンチの信長軍……。
信長「むむむ! サル」
秀吉「はい。信長さん」
信長「おまえの心が読める」
秀吉「え。本当ですか?」
信長「きっと心が通じ合ってるんだな、おれたち」
秀吉「やった♪」
信長「おまえの考えていることを当ててやろう」
秀吉「はい」
信長「『僕がおとりになって敵を食い止めますから、信長さんは横道から逃げてください』」
秀吉「えっ……」
信長「では、お言葉に甘えて」
秀吉「いや、ちょっと」
信長「ん?」
秀吉「僕、そんなこと考えてませんよ」
信長「またまた〜。君の心はお見通しだよ。じゃ、がんばって!」
秀吉「……」
信長は秀吉に殿軍(しんがり)をまかせてさっさと逃げた。
殿軍とは、味方を逃がすための犠牲、いわばトカゲのしっぽの役割である。
殿軍をつとめることは死を意味する。
わずかな兵力で殿軍をつとめることになった秀吉は……
秀吉「(゚∀゚)おれ、ピ―――ンチ!」
兵士「手元の兵力はたった数百人です。少なすぎます」
秀吉「ここ、なんていう土地?」
兵士「金ヶ崎(かねがさき)です」
秀吉「ここがおれの墓場になるのかぁ」
兵士「あきらめないでください」
秀吉「だってさぁ。少数で大軍を破る方法なんて、ある?」
兵士「奇襲です。こっそり接近して、ドカンと攻撃する」
秀吉「じゃあ、その逆をやろう」
兵士「えっ」
秀吉「こっそりじゃなくてワイワイ行こう」
兵士「どうしてっ?」
秀吉「そしたら信長さん、『サルはこの任務に向かないな。替えてあげよう』って思うしょ」
兵士「信長さんは逃げるのに必死で、そんなとこまで見てくれませんよ」
秀吉「火をたけ、太鼓を叩け、旗を振り回せ」
兵士「目立ちすぎますよぉ(汗)」
秀吉「おれが奇襲に不向きだってことをアピールするんだ。どんどん騒げ〜」
一方、敵は……
敵1「秀吉軍、うるさくね?」
敵2「騒ぎすぎだよね」
敵1「ふつう、少数なら奇襲攻撃をえらぶと思うんだけど……」
敵2「でも、あの騒ぎっぷりじゃあ、奇襲をするつもりはないみたいだよ」
敵1「じゃあ、何をするつもりなんだろう。あ、わかった」
敵2「なに?」
敵1「秀吉軍の数は少ないように見えるけど、じつは……」
敵2「じつは?」
敵1「じつは大軍を隠し持ってるのかも。つまり伏兵」
敵2「伏兵」
敵1「おれたちが油断して接近したのを見計らって、隠れていた大軍がガバーッと現れ……」
敵2「うん」
敵1「おれたちをボコボコにするってわけだよ」
敵2「そういう作戦か。秀吉、頭いいな〜」
敵1「でも、その手には乗らないよね」
敵2「うん」
敵1「ここはひとまず撤退して様子をみよう」
敵2「懸命な判断だ」
敵1「秀吉も頭いいけど、おれたちも頭いいね」
敵2「そうだね」
敵1「これ、頭いい人同士の対決だね。すげぇカッコイイ」
敵2「うん。おれたち、カッコイイね」
敵1「じゃ、撤退ぃ〜」
敵2「おーっ♪」
こうして秀吉はピンチを脱し、無事に京都へ戻った。これが有名な金ヶ崎の退き口である。
秀吉が信長の無理難題に振り回される日々は、まだつづく。
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ありけん