第30話
赤ちゃん

 秀吉は山崎の戦いに勝利した。  だが、おかげで先輩社員の柴田勝家に目をつけられるはめになった。

柴田「おいっ。秀吉」

秀吉「は、はい」

柴田「おまえ、信長さんのカタキを討ったからって調子に乗るなよ」

秀吉「いえ、べつに乗ってませんよ」

柴田「もしかして、信長さんの天下統一事業を継ぐのは自分だ、なんて思ってるんじゃないだろうね?」

秀吉「思ってませんって」

柴田「ウソつけ。思ってるくせに」

秀吉「いやホント違いますって」

柴田「そのうちヤキ入れてやるから覚悟しとけよ。プンプン!」

秀吉「えぇ〜…」

 秀吉は柴田勝家を敵に回してしまった。

秀吉「困った。柴田さんに嫌われちゃった」

兵士「柴田さんは織田家の重鎮です。嫌われたら織田家ではやっていけませんよ」

秀吉「織田家でやっていけないってことは、おれ、転職するしかないってこと?」

兵士「そうですね」

秀吉「うっそぉ〜。せっかくここまで出世したのに」

兵士「でも秀吉さんほどの人物なら、他のところでも高給で雇ってくれますよ」

秀吉「いや、もういいや」

兵士「いいとは?」

秀吉「おれ、癒されたい。もっとほんわかした仕事がしたい」

兵士「例えば?」

秀吉「例えばベビーシッターとか。赤ちゃんの顔見てたら癒されそうだし」

兵士「でも、いきなりベビーシッターなんてできます?」

秀吉「ちょっとは練習しておいたほうがいいかな」

兵士「もちろん」

秀吉「どっかにいないかなぁ。実験台になってくれる赤ちゃん」

兵士「実験台って言わないで下さい」

秀吉「あ! なぜかあんなところに赤ちゃん発見!」

兵士「あぁ、あれは……」

秀吉「さっそく実験台になってもらおう」

兵士「あ、ダメですよ。その赤ちゃんは!」

 秀吉は兵士がとめるのも聞かず、赤ちゃんと遊んだ。

兵士「赤ちゃんと遊んでる場合じゃないですよ」

秀吉「なに?」

兵士「もうすぐ会議の時間です」

秀吉「会議?」

兵士「信長さん亡きあとの織田家をどうするか、それを話し合う重要な会議ですよ」

秀吉「いや、おれベビーシッターで喰っていくから、いいや」

兵士「無断欠席したら怒られますよ。顔だけでも出しといたほうがいいですって」

秀吉「じゃ、ちょっと顔出して、みんなの前でベビーシッター宣言して、すぐ帰って来ようかな」

兵士「赤ちゃんも連れて行くんですか?」

秀吉「うん」

兵士「会議に赤ちゃんはマズイですよ」

秀吉「だっておれになついちゃってるんだもん」

 西暦1582年6月27日。秀吉は赤ちゃんを抱いたまま清洲会議に出席した。

 この赤ちゃんの存在が会議の流れを大きく左右することになる。


第31話へ

ありけん