第33話
北条氏
秀吉が関西で覇権を確立しつつあったその頃、関東地方では北条一族の支配がゆるぎないものとなっていた。
北条家の父「わが北条一族が関東を支配してから、もうすぐ100年くらいになるなぁ」
北条家の子「もうそんなになりますかね」
北条家の父「なるよ。おれたち、ゆるぎないね〜」
北条家の子「これからももっと頑張っていきましょうね」
北条家の父「もちろんだ」
北条家の子「そこで、お父さん」
北条家の父「なんだい。息子よ」
北条家の子「時勢について、意見を伺いたいのですが」
北条家の父「お父さんにわからないことはないよ。言ってみなさい」
北条家の子「まず本能寺の変についてですが……」
北条家の父「ん?」
北条家の子「知ってますよね? 本能寺の変」
北条家の父「……し、知ってる(汗)」
北条家の子「みっちーvs信長の戦いですよ」
北条家の父「ああ。あれか。はいはい。あれね」
北条家の子「本当にわかってます?」
北条家の父「も、もちろん」
北条家の子「本能寺の変について、意見をきかせてください」
北条家の父「みっちーvs信長。どちらが勝つのか、じっくりと行く末を見守るべきだな」
北条家の子「いえ、ていうか、もうみっちーが勝ったんですけど」
北条家の父 Σ( ̄□ ̄;
北条家の子「じゃあ、話題を変えます」
北条家の父「う、うん」
北条家の子「本能寺の変のあとの話ですが」
北条家の父「はいはい。おれの得意分野ね」
北条家の子「秀吉vsみっちーの戦いについては、どう思います?」
北条家の父「はたしてどちらが勝つのか、ここはじっくりと行く末を……」
北条家の子「いえ、もう秀吉が勝ったんですけど」
北条家の父 Σ( ̄□ ̄;
北条家の子「……お父さん」
北条家の父「そんな目でおれを見るな」
北条家の子「じゃあ、話題を変えます」
北条家の父「お願いします」
北条家の子「とにかく、秀吉は今、絶好調ですよね」
北条家の父「だよね。うん」
北条家の子「そこで、秀吉にメールを書きました」
北条家の父「なるほど。メル友として仲良くなり、秀吉にかわいがってもらうというわけか。いいね」
北条家の子「いえ。違います。メールの文面はこうです……」
北条家の父「?」
北条家の子「秀吉、ぶっ殺す」
北条家の父「えっ」
北条家の子「さっそく送信します」
北条家の父「待て待て。落ち着け」
北条家の子「なんですか?」
北条家の父「年取ってから『あの頃はおれもヤンチャだった』って言いたいのか知らんけどさ」
北条家の子「違いますよ」
北条家の父「とにかく、そのメールはまずいって」
北条家の子「どうしてです?」
北条家の父「ゴタゴタになるしょ。ゴタゴタは良くない」
北条家の子「お父さん」
北条家の父「はい」
北条家の子「お父さんは1573年に、家督を僕にゆずりましたよね」
北条家の父「ゆずった」
北条家の子「ということは、現在の北条家のリーダーは、この僕です」
北条家の父「うん」
北条家の子「僕の意見にしたがってもらいます」
北条家の父「だからってわざわざ絶好調の人間にケンカ売ることないしょ」
北条家の子「僕たち北条家は関東の雄です。いっぽう、秀吉は関西の雄」
北条家の父「うん」
北条家の子「両雄ならび立たず。天下に英雄はふたりもいりません」
北条家の父「しかし……」
北条家の子「僕は秀吉と戦って、勝ってみせます」
北条家の子(北条氏直)はメールを送信した。
ここは関西。
秀吉の城。
兵士「秀吉さん、メールが来てますよ」
秀吉「誰から?」
兵士「関東の北条さん」
秀吉「なんて?」
兵士「ぶっ殺す、って」
秀吉「……」
兵士「あ。もう一通きてます」
秀吉「誰から?」
兵士「織田家の社内メールですね。柴田さんからです」
秀吉「なんて?」
兵士「ぶっ殺す、って」
秀吉「……」
兵士「織田家の内部にも外部にも、敵をつくっちゃいましたね」
秀吉「うん(汗)」
ここをうまく乗り切れば、天下が転がりこんでくる。しかし、しくじれば身を滅ぼす。人生をかけた一世一代の駆け引きがはじまる。
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ありけん