第43話
関白

 秀吉は征夷大将軍になるために、朝廷に働きかけることにした。

秀吉「でもさ」

兵士「はい」

秀吉「朝廷に働きかけるっていっても、どうすりゃいいのかな」

兵士「じつはですね…」

秀吉「うん」

兵士「今朝の朝刊にこんなのが入ってました」

秀吉「なにこれ」

兵士「征夷大将軍募集のチラシです」

秀吉「おお〜」

兵士「裏が申し込み用紙になってます。これに記入してFAXすればOKですよ」

秀吉「さっそく応募しよう」

兵士「じゃあ、住所、氏名、年齢、職業、電話番号を書いてください」

秀吉「この欄はどう書けばいいの?」

兵士「どれです?」

秀吉「『あなたは源氏の子孫ですか?平氏の子孫ですか?』っていう欄」

兵士「源氏と平氏って、知ってます?」

秀吉「名門ってことくらいは」

兵士「武家の2大名門ファミリーです」

秀吉「うん」

兵士「秀吉さんはどっちの子孫ですか?」

秀吉「どっちでもないよ」

兵士「それはマズイなぁ」

秀吉「だっておれ、もともと農民の出身だし」

兵士「あ、そうでしたね」

秀吉「そんな名門の血、ひいてないよ」

兵士「うーん…」

秀吉「じゃあここは空欄でいいか」

兵士「いや、それだと書類審査で落とされるかも」

秀吉「それ、困るね」

兵士「適当に書いちゃいましょう。源氏と平氏どっちにします?」

秀吉「じゃあ平氏」

兵士「即答ですね」

秀吉「『平』っていう字のほうが簡単でしょ」

 秀吉は申込用紙を記入し、朝廷にFAXした。


 ここは朝廷。

朝廷の人1「おもしれー」

朝廷の人2「なに面白がってるのさ」

朝廷の人1「FAXじゃんじゃん来るぅ」

朝廷の人2「え、なんで?」

朝廷の人1「今朝の朝刊にね、征夷大将軍の募集チラシ、入れたんだよね」

朝廷の人2「マジ?」

朝廷の人1「そしたら応募のFAXじゃんじゃん来てさ。ククク」

朝廷の人2「そんなに面白いかな」

朝廷の人1「世の中がおれの手のひらで踊ってる気しない?ククク」

朝廷の人2「べつにしないけど」

朝廷の人1「いろんなところから申し込みのFAX来てるよ。一枚、見てみ」

朝廷の人2「ふーん」

朝廷の人1「志望動機とかみんな神妙に書いててウケルしょ」

朝廷の人2「あれ? なにこれ?」

朝廷の人1「ん」

朝廷の人2「応募用紙のこの欄」

朝廷の人1「この欄って?」

朝廷の人2「『あなたは源氏の子孫ですか?平氏の子孫ですか?』っていう欄」

朝廷の人1「ああ、一応そういう欄もつくってみたの」

朝廷の人2「だって、征夷大将軍って源氏しかなれないじゃん」

朝廷の人1「うん」

朝廷の人2「わざわざここに『平氏です』なんて書いてくるやつ、いないよ」

朝廷の人1「だれかこれに引っかかるかな〜と思って、罠っぽく仕掛けてみたんだけど…」

朝廷の人2「だれも引っかからないしょ?」

朝廷の人1「うん」

朝廷の人2「そんなのに引っかかる無知なやつ、いるはず…」

朝廷の人1「いた――!」

朝廷の人2「うそぉ?」

朝廷の人1「ほら見てコイツ。平氏ってかいてある」

朝廷の人2「うわー、痛いね」

朝廷の人1「痛すぎだね」

朝廷の人2「だれさ、それ」

朝廷の人1「えーとね」

朝廷の人2「うん」

朝廷の人1「Σ( ̄□ ̄; 秀吉さん!」

朝廷の人2「えっ」

朝廷の人1「秀吉さんだ…」

朝廷の人2「秀吉さんって、あの?」

朝廷の人1「うん」

朝廷の人2「秀吉さんほどの実力者なら、征夷大将軍にしないわけにはいかないんでない?」

朝廷の人1「でも、平氏を名乗ってる人間を征夷大将軍にするなんて、前例がないし…」

朝廷の人2「ここで断ったら、秀吉さん、怒るよ」

朝廷の人1「やっばいな〜」

朝廷の人2「あ、いいこと思いついた!」

朝廷の人1「なに?」

朝廷の人2「征夷大将軍が無理なら、関白にしてあげれば?」

朝廷の人1「ああ、関白ね」

朝廷の人2「ぶっちゃけ関白のほうが偉いしさ」

朝廷の人1「そうだね。そうしよう」


 翌日。道端。

朝廷の人2「こんにちは。朝廷のものです」

秀吉「あ、朝廷さんですか。FAX見てくれました?」

朝廷の人2「征夷大将軍への応募、ありがとうございました」

秀吉「えへへ」

朝廷の人2「というわけで、あなたを関白に任命します」

秀吉 (゚∀゚)ん?

朝廷の人2「おめでとうございます。じゃ私はこれで」

 朝廷の人2は去った。


 すこし離れた場所で…

朝廷の人1「どうだった?」

朝廷の人2「有無を言わさず去ってきた」

朝廷の人1「見て。秀吉さん、キョトンとしてるよ」

朝廷の人2「ホントだ」

朝廷の人1「無理もないか。征夷大将軍に応募したら関白に任命されたんだもんね」

朝廷の人2「わけわかんないもんね」

朝廷の人1「わけわかんないね」

朝廷の人2「…見て。まだキョトンとしてる」

朝廷の人1「必死に事態を理解しようとしてるのかな」

朝廷の人2「でもぜんぜん理解できないんだろうね」

 秀吉は平氏を名乗ったため征夷大将軍になれなかった。

 そのかわり西暦1585年7月11日、関白に就任した。

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ありけん