第7話
足軽組頭

 真夜中。ここは城壁が崩れている現場。  ここで秀吉と友達は、職人たちを待っていた。

秀吉「みんな来てくれるかな」

友達「来てくれないかもね」

秀吉「え、マジでそう思う?」

友達「だって、こんな夜中にいきなり呼び出されて怒ってるかもよ」

秀吉「やばいなぁ……」

友達「職人の中には、協調性がなくてプライドが高い人もいそうだからね」

秀吉「あ、誰か来る」

友達「おお〜。職人たちだ」

 10人の職人(A〜J)が集まった。

秀吉「いや〜、みんな、夜中にごめんね」

職人A「なんの用さ」

秀吉「ちょっと仕事をお願いしたくて」

職人A「こんな夜中に!?」

秀吉「うん。この壊れた城壁を直して欲しいんだよね」

職人A「ていうか、君、だれ?」

秀吉「あ、おれね、普請奉行の秀吉です。よろしく」

職人A「てことは、この現場のリーダー?」

秀吉「うん」

職人A「土木とか建築の経験、あるの?」

秀吉「いや、ないけど……」

職人A「ダメじゃん。リーダー失格」

秀吉「えっ」

職人A「おれがリーダーになる」

 そこへ、他の職人たちが口をはさんだ。

職人B「おい、ちょっと待て、おれがリーダーだ」

職人C「いや、経験豊富なおれがリーダーだ」

職人D「才能ピッカピカのおれがリーダーに決まってるしょ」

職人E「じゃあ、誰がリーダーにふさわしいか勝負だ」

職人F「望むところだ!」

職人G「一番スピーディに城壁を直した者が勝ちってのは、どう?」

職人H「いいよ。負ける気がしねぇ」

職人I「おれだって」

職人J「さっそく勝負開始だ!」

 10人の職人はプライドをかけて徹夜で仕事に打ち込んだ。  おかげで翌朝には城壁が完成した。

 秀吉は信長に呼び出された。

信長「サル」

秀吉「はい」

信長「城壁、一晩で直したんだって?」

秀吉「はい。完璧です」

信長「職人の協調性のなさとプライドの高さをうまく利用したね」

秀吉「ええ、まぁ」

信長「サルは人を動かす天才かもね」

秀吉「いや〜、それほどでも(笑)」

 人使いのうまさを認められた秀吉は足軽組頭に出世した。

 その夜、居酒屋。秀吉と友達の酒宴。

秀吉「思いっきり信長さんに褒められちゃった」

友達「なんて?」

秀吉「人をまとめる力があるって」

友達「ぜんぜんまとめてなかったけどね」

秀吉「そんなことないよ」

友達「職人が口論はじめたとき、なまらオロオロしてたしょ」

秀吉「オロオロしたと見せかけて、じつは堂々としてたの」

友達「無駄な『じつは』だね」

秀吉「君も武士コースに転向しな。出世できるよ」

友達「おれは農民でいいよ」

秀吉「うー、なんかちょっと眠い」

友達「ゆうべ、徹夜だったしね」

秀吉「あ、信長さんからメールだ」

友達「呼び出し?」

秀吉「『緊急事態、大至急集合!』だって……」

 西暦1560年、今川義元の大軍が織田信長の領内に侵攻してきた。

 戦国の歴史を変えた「桶狭間の戦い」がはじまる。


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ありけん