ダビデ王の目次へ
第10話
遷都

北部人は条件をつきつけた。

北部人「遷都のご決断をお願いします」

ダビデ「せんと?( ゜o ゜)」

北部人「遷都をしてくれれば、われわれはあなたに服従します」

ダビデ「せんと…?」

北部人「はい。遷都です」

ダビデ「せんと…って?」

北部人「え。王様なら普通、知ってますよ」

ダビデ「知らないっす」

北部人「うわ、なんか、丁寧に話して損した」

ダビデ「なんすか? せんとって?」

北部人「首都機能の移転ですよ」

ダビデ「ああ…」

北部人「わかりました?」

ダビデ「”機能”と”移転”の意味がちょっと…」

北部人「!( ̄□ ̄;)」

ダビデ「へへ」

北部人「遷都って、例えば『今まで東京が首都だったけど、これからは大阪を首都にしまーす』とか、そういうことです」

ダビデ「ああ、なるほど」

北部人「頼みますよ、王様」

ダビデ「でも、遷都って、大変そうじゃない?」

北部人「はい。ビッグイベントです」

ダビデ「なんでそんな面倒くさいことしたいの?」

北部人「今のイスラエルの首都って、南部にあるじゃないですか」

ダビデ「ふうん」

北部人「それって、北に住むわれわれにとっては、不便なんですよ」

ダビデ「ああ、買い物とかね」

北部人「いや、政治的にも発言力が弱まるし」

ダビデ「そっかぁ」

北部人「だから『せめてイスラエルの真ん中あたりに首都を移動してほしいなぁ〜』って、思ってるんです」

ダビデ「なるほど」

北部人「ね。遷都のご決断を」

ダビデ「うん。わかった」

ダビデはひとまず南部へもどった。

ダビデ「ふふ〜ん ( ̄ー ̄ )」

民衆「なんですか、ニヤニヤして」

ダビデ「遷都って、しってる?」

民衆「せんと? 知らないです」

ダビデ「僕、知ってるさ」

民衆「なんですか? 遷都って?」

ダビデ「じゃあ、3択ね。次の3つの中から正解えらんでね」

民衆「いいですよ」

ダビデ「1、首都機能の移転」

民衆「ふむ。2は?」

ダビデ「2、猫の名前。あ、犬の名前。ま、猫でもいいけど…」

民衆「……」

ダビデ「3、えーと、3はね、何にしようかな…。えーと」

民衆「1」

ダビデ「すげぇ! 頭いい!」

民衆「良くないですよ…」

ダビデ「もともと知ってた?」

民衆「知らないですって…」

ダビデ「じつはね、今度、遷都するさ」

民衆「本気で!?」

ダビデ「うん。首都をイスラエルの真ん中らへんに移そうかなと…」

民衆「いいですけど、新しい首都、どこにします?」

ダビデ「地図見てみよう。どれどれ。ふうん。イスラエルってこうなってるのかぁ」

民衆「南北に長いですね」

ダビデ「真ん中あたりっていうと、このへんかな」

民衆「そうですね。その辺の街ですね。どの街にします?」

ダビデ「じゃ、この街にするか」

民衆「うわ、小さいですね。なんていう街ですか?」

ダビデ「うんとね、イエ…。イェ…。読みづらっ!」

民衆「イェルサレム、ですね」

ダビデ「そう、それ」

後世「世界史でもっとも重要な都市」と呼ばれることになるイェルサレムは、こうして歴史に登場する。

民衆「では、さっそく、引っ越しの準備にかかります」

ダビデ「え。さっそく?」

民衆「はい。さっそく」

ダビデ「少し休まん? 僕、さっき北部から帰ってきたばっかりだしさ」

民衆「でも、やることやっちゃわないと。生きてる時間には限りがあるんですよ。明日、死ぬかもしれないし」

ダビデ「だったら、なおさら少しでもダラッとしたいかも」

民衆「首都機能の移転なんていったら、おおごとですよ。王様にはビシバシ働いてもらわないと」

ダビデ「僕さぁ…」

民衆「はい」

ダビデ「神様に『王様にしてあげる』って言われて、軽い気持ちで喜んでたけど…」

民衆「はい」

ダビデ「実際、王様になってみたら、けっこう大変だね」

民衆「そりゃ、そうですよ」

ダビデ「北部の人には怒られるし、遷都っていう言葉くらい知ってないとダメだし、休むひまないし」

民衆「仕事、つらいですか?」

ダビデ「つらいっす (T_T) 羊飼いの頃はよかったなぁ〜。のんびり丘の上で雲を見て…」

民衆「でも、もう羊飼いには戻れませんよ。王様なんですから」

ダビデ「…そうだね」

ダビデは王の重責に耐えつつ、イェルサレム遷都を決断した。

しかし、それは軽率な決断だった。


第11話へ

ダビデ王の目次へ
最新作はメルマガで♪
空メールで登録