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第9話
恋愛玉

ダビデの自宅。

神様「殴ってくれ」

ダビデ「え?」

神様「いいから、殴ってくれ」

ダビデ「神様を?」

神様「そう。おれを。ガツンと」

ダビデ「なんでさ?」

神様「いま、おれ、夢を見てるんじゃないかと思ってさ」

ダビデ「夢じゃないよ」

神様「ホント?」

ダビデ「ホント」

神様「ホントに君、王様になったの?」

ダビデ「うん」

神様「じゃあ、おれの研修課題は、無事終了かぁ」

ダビデ「そういえば、そうだね。僕をイスラエルの王様にすることが、君の研修課題だったもんね」

神様「これでやっと、おれも一人前だよ」

ダビデ「おめでとう」

神様「ありがとう。研修クリアしたこと、神様の国のみんなに報告したら、すげー尊敬されそう。むふふ」

ダビデ「これって、そんなに難しい研修だったの?」

神様「プロの神様の免許を取る研修だからね。なまら難しいよ」

ダビデ「プロの神様って、なにするの?」

神様「いろいろ。めぼしい人間に宗教のアイディアをこっそり教えたり、お告げをしたり…」

ダビデ「すげぇ」

神様「すごいしょ( ̄ー ̄ )ふふん」

ダビデ「みんなに自慢しちゃお。『僕の知り合いの神様、すごいさ』って」

神様「いいよ。言って。どんどん言って」

ダビデ「言うよ。『あの神様、ほとんど民衆まかせで研修クリアしたさ。すごくない?』って」

神様「やっぱり、あんまり言わないで…」

ダビデ「研修クリアしたら、お祝いとかあるの?」

神様「あるよ。偉い神様から、ご褒美もらえるさ」

ダビデ「うそ! 何もらえるの?」

神様「なんでも。なんでも叶えてくれるの」

ダビデ「いいなぁ〜。なに叶えてもらうの?」

神様「昔から夢があってね…」

ダビデ「あ、ガムもらえば?」

神様「いらないよ」

ダビデ「ガムって、噛んでも噛んでも、なくならないんだよ」

神様「知ってるよ」

ダビデ「お得じゃない?」

神様「おれ、恋愛玉をもらうつもり」

ダビデ「僕だったらガムもらうな〜」

神様「ていうか、聞き流したしょ?」

ダビデ「なにを?」

神様「恋愛玉」

ダビデ「あ?」

神様「『恋愛玉ってなに!?』とか言わないの?」

ダビデ「じゃ、恋愛玉って、なに?」

神様「なんかむかつくけど…」

ダビデ「高価なの?」

神様「やたら高価だよ。どこにも売ってないし。今回のチャンスを逃したら、もう一生、手に入らないね。恋愛玉ってね、あめ玉なんだけど、これ舐めるとね、素敵な異性と出会えて、一生しあわせに暮らせるんだって。てへへ」

ダビデ「へぇ〜」

神様「おれ、女の子と話すの、なんか苦手でさ、恋愛経験ないから、絶対ほしいなと思って」

ダビデ「研修が終わったってことはさ、神様、帰っちゃうの?」

神様「帰るよ、神様の国に」

ダビデ「寂しくなるなぁ」

神様「電話するよ」

ダビデ「でも、僕、電話苦手だし…」

神様「ま、そう言わないでさ。あ、ていうか、いくら電話苦手だからって、話してる途中にいきなり切るのとか、なしね」

ダビデ「えー、どうしよう」

神様「そこ、迷わんでよ…」

ダビデ「いつ帰るの?」

神様「はやく恋愛玉ほしいからね。もう帰るわ」

ダビデ「また急だね。途中まで送るよ」

神様「いや、タクシーで帰るから、大丈夫」

ダビデ「ほんと?」

神様「うん。いろいろお世話になったね」

ダビデ「いえ、こちらこそ」

神様「とつぜん押しかけてすまんかったね」

ダビデ「楽しかったよ」

神様「じゃ、さようなら (^_^)/~」

ダビデ「さようなら〜 (T_T)/~~~」

神様は、去った。

入れ違いに、民衆がすごい勢いで現れた。

民衆「大変だー!」

ダビデ「どうしたの?」

民衆「やばいことになりました」

ダビデ「なにさ?」

民衆「イスラエルの北部の人たちが、怒ってます」

ダビデ「え。誰に対して怒ってるの?」

民衆「ダビデさんに対して」

ダビデ「うそぉ。僕ぅ?」

民衆「はい。『調子こくなよ』って、言ってました」

ダビデ「詳しく聞かせて」

民衆「詳しく言うと、『いや、まじダビデむかつく。あいつ最近調子ん乗ってない? 一回しめとくか。ホント、調子こくなよって感じだよね』です」

ダビデ「いや、怒ってる理由を詳しく…(汗)」

民衆「ああ、理由ですか。ダビデさんが勝手に王様になったからですよ」

ダビデ「ええっ!?」

民衆「北部の人に無断で王様になるのは、やっぱやばいっすよ」

ダビデ「だって、君たちが僕を王様にしてくれたんじゃん!?」

民衆「われわれは南部の民衆ですから。北部の民衆には、ダビデさんのほうからちゃんと了解とっといてもらわないと」

ダビデ「そんな〜 (T_T)」

民衆「とにかく『ちょっと顔かせ』って言ってましたよ」

ダビデ「うわー。まずい。すげぇ怒られそうだ」

民衆「早く行ったほうがいいですよ」

ダビデは北イスラエルにおもむき、北部の人々に会った。

ダビデ「こ、こんにちは〜。お邪魔します…(恐る恐る)」

北部人「ん? どなたですか?」

ダビデ「ダビデという者ですけど…」

北部人「あー。ダビデさんね。どーも。お世話になってます」

ダビデ「こちらこそ、あの、今回は勝手に王様になってしまって、ご迷惑をおかけして…」

北部人「ああ、その件ね、ホント頼みますよ」

ダビデ「すいません」

北部人「なんで、うちらになんも言わんで王様になったのさー」

ダビデ「いえ…。その、南の民衆さんが、いいっていうから、いいのかな〜と思って」

北部人「今度から王様になるときは、前もってこっちにも一言お願いしますね。こっちもメンツってもんがありますから」

ダビデ「すいません」

北部人「まあ、こうしてわざわざ足を運んでくれたんだから、もう水に流しましょう」

ダビデ「ホントですか♪」

北部人「はい。われわれ北部人も、一致団結してダビデ王を支持しますよ」

ダビデ「よかった〜」

紀元前1004年。 ダビデはイスラエルの北部勢力をも糾合し、正式にイスラエル全土の国王となった。このときダビデ、37歳。

北部人「ただし、条件があります」

ダビデ「ドキッ。な、なんですか?」

北部人「ダビデさんには、ひとつの決断をしてもらいたいんです」

ダビデ「決断…!?」

この決断が、世界史上、ダビデの名を永遠のものにする。


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