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第3話
失職

 秀吉は松下家でバイトをはじめた。  しかし、職場の先輩たちの風当たりは強かった。

 先輩たちの会話。

先輩1「ねぇ、秀吉ってどう思う?」

先輩2「あの、新しく入った人?」

先輩1「うん」

先輩2「べつになんとも思わないけど」

先輩1「でもあいつ、愛知県出身なんだよ」

先輩2「えっ。そうなの? 愛知県出身なのにここ(静岡)で働いてるの?」

先輩1「うん」

先輩2「完璧よそ者でしょ」

先輩1「しかもね、あいつ、農民ださ」

先輩2「農民!?」

先輩1「うん。貧しい百姓なんだって、実家」

先輩2「百姓のくせに武家でバイトしてるってこと?」

先輩1「うん」

先輩2「やる気マンマンで生意気だね」

先輩1「でしょ。いじめるか?」

先輩2「いいけど、どうやる?」

先輩1「まず、おれたちで悪いことバッコバコしてさ、」

先輩2「うん」

先輩1「それを全部、秀吉のせいにするってのは、どお?」

先輩2「いいね〜。で、何する?」

先輩1「おれ、みんなの下駄箱の靴、ぜんぶ左右逆にしとく」

先輩2「うわ、イライラするね」

先輩1「でしょ」

先輩2「おれは会議室のチョーク、赤ばっかりにしとく」

先輩1「うわ、見づらいね」

先輩2「でしょ」

先輩1「あとおれ、みんなのパソコンの壁紙、Mr.マリックにしとく」

先輩2「さっそく実行しよう」

先輩1「おーっ!」

 秀吉はすべての罪を着せられた。

 数日後。秀吉は松下加兵衛に呼び出された。

松下「ほんとマジでさ、頼むわ」

秀吉「どうしたんですか?」

松下「また、とぼけちゃって」

秀吉「は?」

松下「そういう協調性のない人、困るんだよね。クビ」

秀吉「え?」

松下「クビ」

秀吉「ちょっと、そんな」

松下「さっさと出て行け〜!」

 西暦1554年。秀吉は松下家をクビになった。

 しかし秀吉は松下加兵衛を恨まなかった。

 それどころか、貧しい時代に一時的にも雇ってくれた恩を忘れなかった。

 後年、天下の覇権を握った秀吉は、松下加兵衛を大名に取り立てている。


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